歯周病治療
歯周病とは?
歯周病とは、歯の周りの歯ぐき(歯肉)や、歯を支える骨などが破壊される病気で、かつては歯槽膿漏と呼ばれていました。
歯と歯ぐきの境目(歯周ポケット)に細菌が入り、歯肉が炎症を起こし赤く腫れて、ブラッシング時に出血します。しかし、痛みは全くありません。さらに進行すると、歯肉の中にある歯を支えている骨(歯槽骨)が溶けて、膿が出たり歯がグラグラしてきます。この時期になると、やっと痛みや腫れをともないます。そして、最後には歯が抜けてしまいます。
その理由として、初期の段階では虫歯のように歯に穴があいたり、痛くなったりと言ったはっきりとした症状が現れにくく、かなり進行しないと、痛みや腫れと言う自覚症状が現れないからです。さらに、日本人には歯の定期検診を受ける習慣があまりないこと、また歯周病を確実に治療できる歯科医が残念ながら非常に少ないことなどが考えられます。一生自分の歯で噛むためには、むし歯の予防と同時に歯周病の予防と適切な治療が大切なのです。
歯周病って治るの?
現在では歯周病は、予防でき治療も可能です。大切なのは予防、診断、治療、そしてメインテナンスです。
この15年の間に、歯周治療は急速な進歩を遂げました。以前は「不治の病」とさえ言われてきた歯周病も、現在では進行を阻止することが可能となり、健康をとりもどすことができるのです。
まず、歯周病の原因は歯垢ですから、それをためない、増やさないことが基本です。
- 正しい歯ブラシの方法で毎日実行することです。歯の表面を歯垢のない清潔な状態にしておく
- 歯肉の中まで入っている歯石を完全に取り除き、さらに根の表面を滑らかにして炎症を引き起こす細菌を徹底的に除去することです。
- 傷んだ歯肉、骨を治療して健康に近い歯肉にすることです。
- 健康の保持のため歯科衛生士による専門的なクリーニングなどのメインテナンスを定期的に受けることです。
歯周病の恐ろしい点は、初期・中期には痛みをあまり感じることがなく症状がどんどん進むことです。痛みや腫れの症状が出てくるのは末期になってからで、それまではほとんど自覚症状がありません。これがこの病気の最大の特徴で、また一番恐いところです。
歯周病治療の流れ
- 精密検査
- 歯周ポケットの測定
- レントゲン診断
- 問診(局所的、全体的なご病気)
- かみ合わせのチェック
- スケーリング・ブラッシング指導
精密検査の結果をもとにまずはプラークコントロールを十分に行います。
次に歯の表面の歯石を除去します。 - ルートプレーニング
精密検査の結果をもとに1回につき3~4歯ずつ歯肉の表面に麻酔をして歯肉の中に隠れている歯石を丁寧にかき取ります。
この治療を炎症が強い部位に行います。 - 再評価
ルートプレーニング終了後に炎症がどの程度改善されているか再び精密検査を行います。 - 再評価後
炎症が落ち着いて症状の改善が見られる部位はメインテナンスヘ。
炎症がまだ残っていて症状の改善が認められない部位は、歯周外科手術、歯周組織再生療法を行います。
最新の歯周病治療 ~再生療法~
GTR法とエムドゲイン
中等度以上の歯周病は歯の周りの骨(歯槽骨)の吸収が起こっています。
この歯槽骨の吸収は、ほとんどの場合、歯周病が完治しても元の形には戻りません。この吸収した歯槽骨の形に添うように、歯肉が表面を覆っていますので、歯の表面が以前と比べ多く露出します。そのため歯が長くなったように見えてしまったり、歯が空いてしまったり、時には歯がしみるといった症状がでてくることがあります。
これは、歯槽骨に再生能力が無いわけではなく、歯肉の治癒能力のほうが、スピードが早いために起こってしまう現象です。
この歯槽骨の吸収してしまった部分に歯肉が入り込んで再生するのを阻止し、歯槽骨の再生を促すのが再生療法です。再生療法には2つの方法があり、歯の周りにメンブレンという特殊な膜を張り、歯槽骨の吸収してしまった部分に歯肉が入り込むのを阻止し、歯周組織の再生を待つGTR法と、吸収してしまった部分に直接、歯周組織の再生を促すような薬剤を塗布するエムドゲイン法があります。
GTR法
歯周病で破壊、吸収された歯周組織は、その原因を除去すれば再生しようとします。
しかし、歯周病に罹患した部分を清掃した後に何もせずそのまま治癒を待つと必要な支持組織が再生する前に歯肉がそこに入り込み歯周組織の再生を阻んでしまいます。
そこで、歯周ポケット内部を清掃した後にメンブレンと呼ばれる膜を設置し、外からの不要な歯肉が入り込まないよう防御します。そうするとメンブレンの下には歯周組織が再生を始め、ゆっくりと成長していきます。
この成長には時間を要しますので、メンブレンの下が新しい組織で満たされるまで一定期間保持しておく必要があります。(平均4週間)その後、4週間から8週間後にメンブレンを取り除きます。
新たに再生された歯周組織は、始めのうちは非常に幼若ですが、時間の経過とともに成熟し、完全にもとの組織と同じ位の成熟度に達します。
※ 安全性について
使用するメンブレンは、生体適合性に優れている人工材料ですのでアレルギー反応の心配はありません。
メンブレンを用いた再生療法の場合、生体親和性の高い人工繊維を用いて作られた膜を用いますので、アレルギーなどの問題がなく、再生させたい骨量がある程度多い場合でも対応可能です。しかし、歯肉の進入を阻止する反面、骨面からの血液供給も遮断してしまうため、歯肉の治りが遅い場合もあり、また、成功しても4~8週間後に膜を取り除くためにもう一度手術が必要であるといったデメリットもあります。
※歯周病がかなり進行してしまっているような場合には、適応にならない場合もあります。
エムドゲイン
エムドゲイン法の目的は、GTR法と同じく、歯周組織を再生させることです。
GTR法では、歯肉が入り込むのを膜を用いて阻止しますが、エムドゲイン法では、エムドゲイン・ゲル(エナメルマトリックスデリバティブ)という薬剤を欠損部に入れ、歯肉の侵入を防ぐと同時に歯周組織の再生を促します。
このエムドゲイン・ゲルは時間の経過とともに歯周組織の再生を促しながら吸収していきますので、GTR法のように後からもう一度手術を行う必要はありません。
エムドゲイン・ゲルの主成分
エムドゲインの主成分は、子供の頃、歯が生えてくる時に重要な働きをするたんぱく質の一種であるエナメルマトリックスデリバティブです。このたんぱく質は、歯周組織の形成に大きく関与することがスウェーデンでの研究で分り、幼若ブタの歯胚(歯の種のようなもの)から抽出精製されています。
安全性について
現在、世界30カ国ほどの範囲で使用されていますが、感染症の報告はなく、また、現在の化学水準に基づく高い安全性確保の下で管理されている幼若ブタを用いますので、安全性は確立されています。
このエムドゲイン法は、GTR法と比べ比較的簡単に手術が終わりますし、使用した薬剤が再生を促しながら吸収されていくので、薬剤を取り除くための手術を必要としません。しかし、使用する薬剤がゲル状であることから再生させたい部分の骨量のコントロールが難しく、適応となる症例はGTR法と比べやや狭いのが現状です。
どちらの再生療法も安全性は高く、効果は高いのですが、再生できる骨量には限界があるため、高度に進行した歯周病は適応にならないのが現状です。
メインテナンスとPMTC
歯周病は再発が多い病気と言われています。その理由のひとつに、このメインテナンスを受ける習慣が日本人に定着していない事があげられます。
歯周治療が終了しても、きちんとした管理ができていなければ再発してしまいます。
歯周病の治療中や治療終了直後は、歯周病菌が非常に少なくなっています。はじめは、ブラッシングも非常に注意し、一生懸命行っていますが、時間とともにだんだん疎かになっていく場合もあり、再び歯周病菌が増殖し再発をおこしてしまうのです。メインテナンスとは、定期的に口腔内を管理するこにより歯周組織の健康を維持していくことです。
メインテナンスとは、歯周病を再発させず、健康な状態を維持していくための定期的な治療のことです。治療が終了した後は、3ヶ月ごとの定期検診の受診をお勧めします。
細菌の集団であるプラーク(歯垢)は、毎日の適切なブラッシングでほとんど除去する事ができますが、深い歯周ポケットの中や、歯並びの悪い所にある細菌はブラッシングでは除去できません。これらは歯科衛生士による専門的なクリーニング(PMTC)によって除去する必要があります。
歯周病は再発の多い病気と言われています。治療によって症状が改善したとしても、そこは一度歯周病に侵されたところです。治ったといっても溶けてしまった骨が元通りに戻っているわけではなく、ほとんどが歯と歯肉が弱い結合で治っているのにすぎないのです。ブラッシングが不十分であったり、メインテナンスを怠ると細菌が活動をしはじめ、歯周ポケットが深くなり、容易に「再発」を起こします。
また、残念ながら治療の限界のため、部分的に治りきらないところが残ってしまうこともあるでしょう。そのような部位でもメインテナンスを継続することにより歯周ポケットがさらに深くならないように、進行を食い止めることができるのです。
料金表
Price List
※中等度から重度の歯周病に罹患した場合保険の診査では不十分です。必要に応じて価格はかわります。
歯周組織再生療法 (1歯)